自分の髪を無造作に掬い上げじっと見つめていた彼女は次に空を見た。

「もうじき雨、降りそうだけど」

チラリと俺の顔を見てどうするのかと返答を待っているようだ。

「もう少し先にクリスタルがあった筈だ」

「分かった、行くのね」

「それまでは持つだろ」

そう見込んで進んでいったが予想を反して天気の崩れは早かった――







be exposed to rain







「あまり離れると危ないぞ」

雨が降る中をスタスタと歩く処を見ると、どうやらは機嫌が悪いようだ。


「見える範囲にいるなら問題ないと思うけど」

こちらを見ることなく、その言い方も刺々しい。

「おい、

「何」

「俺が悪かった」

『行く』と言ったのは自分だ。
こちらに分があるのだからとバルフレアは素直に謝った。

クルリと振り返ったが真っ直ぐバルフレアに近づいていく。
間合に入ると徐に腕を掴み、連れ歩かれた。


「怒ってないから」

「この態度で怒ってないなら他に何だって言うんだ」

「ただ、イライラしてるの」


そこに何の違いがあるのだろうか


「ジメジメして、息苦しい・・・」


こういう雨は嫌いだから、それが理由。
普通雨に濡れること事態が嫌だというのに、彼女の感覚は少し違うらしい。


「だから休まないのか?」

「突っ切りましょうよ、もうすぐなんでしょ?」

「それは、晴れてればの話だ」

ため息をついて「もう知らない」と口にしたはそれから歩かなくなった。


窪んだ岩地を発見して身を置き、晴れそうにない空を彼女は見つめる。


「仕方ない、ここで少し様子を見るか」

「でもこんな所じゃ火も付けて暖も取れないね」

「そうだな、洞窟になっていればよかったけどな」


フゥとため息をついたバルフレアには顔を向けきょとんとした顔をみせる。


「あ、、、」

「どうした?」

「そうやって髪が下りてると雰囲気が違うわ。紳士的に見える」

「何だそれ。俺はいつもそうだろ」

「フフッ、どうかしらね」


意味深な返事で会話を終わらせは雨を受け取るように手を伸ばした。
手に僅かにたまった水が音を立てる。



「雨の音を聞くと落ち着く。お昼に寝るにはとっても心地いいわ」

「まぁ、確かにな。寝るには向いてる」

「誰かと一緒なら余計にね」



が掌を返し雨水はぽたぽたと地面へと落ちていった―



「もしかして誘ってくれてるのか?」

「もしそうなら、こんな所にはいないと思うけど?」

腕を組んだが首をかしげてそう答える。

「寒いなら暖めてやるぜ」

「人肌は恋しいけど、お風呂に入りたいから遠慮しておく」

一歩踏み出した彼女はそのまま歩き出した。

「おい!」

「待ってても止みそうにないもの」

「休憩してねぇじゃねーか」

髪を掻き揚げいつものスタイルにして後を追う。
どうせすぐに戻ってしまうけれど、の前で紳士でいた所で何の意味もない。それならいつもの自分でいる方がいい。



「なぁ、

「ん?」

「今度雨が降ったら俺んとこ来い。添い寝してやる」

「・・・・・・っふ、あははっ!」

「恋しいんだろ。だったら」

「それならバルフレア以外の人に頼むから心配しないで」

「何言ってんだ、どうしてそうなる」

悪びれる事もなく笑い続けるの正面に立って目を見据える。だがそれでも続く彼女の笑い声―


「・・・おい」

「だって、添い寝だけなんでしょ?そんなのだったら誰だってできるじゃない。」

「この野郎、今の言葉忘れるなよ」

「そんなに本気にしないでよ。本当に好きなのはバルフレアだけ」

「だから余計にだろ。に触れていいのは俺だけだ」




水溜りにバルフレアの足が入りピシャンと鳴る、両頬を包まれ引き寄せられた唇は突然塞がれた。


「・・・いきなり何す―」

呼吸をする間だけを与えられた口はまた彼の唇が重なり今度は強く長い間触れ合う。


逃れようにも身長差と押さえられた手は外れる事もなく、
息をするのが精一杯で抵抗する力も薄れていく。




「はぁ・・・・・・・バル。。フレア・・・」


切れ切れの言葉で許しを請うように名前を呼ぶと唇がそっと離れ、入れ替わりに触れたのはバルフレアの親指。


「これでも紳士に見えるか?」

「見えるわけ、、、ないじゃない」



満足したように笑ったバルフレアはの手をとり雨の中を歩き出す。

彼の怒るような事をするまいと酸素の足りない頭でそう思った―



、もう一度キスしていいか?」


「・・・・」


振り返り私の背中を抱きしめる彼の手はすでにあって、どう答えてもするつもりなのだ。

この雨と、バルフレアの口付け。


いったい何時になったら止むのだろうか―